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建築家が語る!
「変形敷地」で叶える理想の住宅とは?Interview 設計事務所LEVEL Architects
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憧れのマイホームを建てる上で夢は膨らむもの。ですが整形されていない「変形敷地」のオーナーの方の中には、そのような場所では理想の家は建てられないと早々に諦めている方もいるのではないでしょうか。
確かに、一般的なハウスメーカーだと規格に縛られ、歪な敷地により間取りや採光などかなりの制限を強いられがち。ですが、建築家は敷地の個性を引き出すノウハウを持っているので、「変形敷地」での住宅にも多くの可能性が広がります。
設計事務所、「LEVEL Architects」の中村和基さんと出原賢一さんに、そのような土地における理想の住まいの叶え方を教えていただきました。
「ホームベース型敷地」その秘めたるポテンシャルとは?
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三角形の敷地や五角形などの多辺な敷地、また傾斜地や極端に細長い「うなぎの寝床」などのような土地が例として挙げられる「変形敷地」。土地価格は安いものの、一般的には住宅建築には不向きと考えられています。今回紹介する「材木座の2世帯住宅」にて二人が手がけた敷地は、なんと「ホームベース型」でした。
「今まで手がけた住宅の中でもかなり難易度の高い土地でした。大きさ自体は90坪近くあったものの、角が多く、さらに傾斜もあり敷地自体がやや窪んだものとなっていました。さらに面している道路もY字型という、イレギュラーな要素を多く含んでいました」と中村さんは設計当初を振り返ります。
敷地条件 |
面積:約80坪 形状:ホームベース型 高低差:傾斜がある窪地 周囲環境: |
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施主要望 |
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「最初はどうしたものかと頭を抱えました。ですが、実はよく土地を読み解いていくと、一見家を建てるには不利に思えたこの敷地が、実は高いポテンシャルを秘めていることに気づきました」と語る出原さんは、「ホームベース型敷地」を活かして、どのように「材木座の2世帯住宅」が生まれたのかを教えてくれました。
敷地を“読み解く”ことで生まれた「材木座の2世帯住宅」
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「脇には水路が流れ、木々に囲まれているこちらの敷地。雑木林側がある南側からは陽が差し、プライバシーも守りやすいので住宅環境自体は良かったのです。それならば! 南側にリビングなどメインとなる部屋を全て集めてしまおうと思ったわけです」と出原さんは、建物の形状の秘密を話してくれました。
「そして思いついたのが、『変形敷地』に沿うような形状になった『変形住宅』を建てるということ。つまり、通常一本となる長い建物を、『くの字』のように折り曲げて敷地に沿わせるような形状を考えたのです」
また、二世帯であったオーナー様の生活を考慮し、面積効率のUPを図るため、出原さんは次のような設計を提案したといいます。
「実はこちらは鎌倉ということもあり、土地柄、景観を損なう恐れのある3階以上の住宅が嫌がられる傾向がありました。二世帯で住むにはある程度の広さが必要なため、どうしても3階建てにしたくなる……。そのため、元々傾斜があり窪んでいる敷地の形状を活かすことで、高層住宅に見えない3階建ての住宅を考えたのです」
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さらにY字型の道路側もデメリットを逆手に取った設計を行なったと中村さん。
「日が当たらず人通りのある道路面に沿うようにすると無駄のない駐車スペースが設けられますが、実はY字型の道路と接しているからこそ、駐車時にターンがしやすくこのような駐車場が可能になるのです。二世帯家族ではありますが、来客時には3台目の駐車スペースが欲しいですよね」
オーナー様の要望を“読み解き”夢のバイクガレージを実現
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また、出原さんが特に印象に残っているのが、施主さんからのバイクガレージのオーダーでした。
「6人で住むことを考えると延床面積に余裕はなく、バイクのビルトイン駐車スペースの設置は他の住居スペースを削る必要がありました。そこで提案したのが、玄関とガレージの融合。通常だと狭くなりがちな玄関をガレージと一体化することで、かなりゆとりのある空間が実現できます。玄関に置かれたバイクも絵になりますしね」
「さらに、親世帯と子世帯の住居スペースにある程度の独立性が欲しいというご要望もありました。そこで、世帯の独立性を担保しながらも、各世帯の居住スペースへ行き来がしやすいように設計をしました。一般的な二世帯住宅だと、扉一枚でのみ隣の世帯に繋がっている場合が多くみられます。しかし、こちらでは、納戸を介して各世帯の居住スペースが繋がる作りにすることで、行き来のしやすさは損なわず、音漏れが気にならず生活することができるようにしたのです。親世帯の居住スペースには、お孫さんが頻繁に遊びに来てくれるようになり、施主様のご両親がとても明るく元気になったと、嬉しいお声もいただきましたね」と中村さん。
“想いをキャッチ”し“形になるように導く” 建築家×工務店のタッグ
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かなり自由度が制限されると思われがちな「変形敷地」。ですが、中村さんと出原さんは、理想の住宅を実現する可能性は大きく広げられると語ります。
「これから家を建てる方は、ぜひそのプロセスを楽しんでください。ご自身がどのような過ごし方をしたいか、理想のライフスタイルのイメージを描き、それを言葉にしてみてください。BDAC=Styleではヒアリングを含めて打ち合わせが3回までなので、細かい仕上げまで携わらず家づくりのレシピをお渡しするスタイルですが、土地をこう紐解いたらうまくいくといった答えの方向性を示せます。この家族ならこう整理するのがいいのでは、と提案を受けることができるのはオーナー様のメリットだと思います。もし敷地で悩まれているのならば建築家の力を活用しない手はないですよ」(出原さん)
「オーナー様の中には、打ち合わせの際に遠慮して希望を伝えられないと言う方もいらっしゃいます。ぜひ臆することなく、私たち建築家にご自身の夢をぶつけていただきたいですね。BDAC=Styleに登録している工務店さんは、熱意がありレベルが高いところが多いと感じます。私たちの提案にやりがいを感じてくれるところが嬉しいですね」(中村さん)
敷地の特徴とオーナー様の想い、ライフスタイルを“キャッチ”し、アイデアを盛り込んだ提案を行う建築家の手腕。敷地が変形であるがゆえに理想の住宅の実現を躊躇されている方は、建築家にデザインしてもらうことを検討されてはいかがでしょうか。
建築家プロフィール
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LEVEL Architects
中村和基氏(左写真)と出原賢一氏(右写真)により、2004年に設立。「第62回神奈川建築コンクール 住宅部門 優秀賞」など数々の賞を受賞する他、Casa BRUTUSなど雑誌媒体にも多数出演。「クライアントの思いを形にするお手伝い」を信条に、クライアントとの親身なコミュニケーションを経て、ちょっとしたサプライズを込めた建築提案を行う。